フィル編 630年 ヴァレシア〜クテレイル地方

フィルは一人で旅を始める。
鋼鉄のクオリティストに会い、最強の剣を作るために。

第三話 快晴の調べ

フィルは村を出てから数日、ある鍛冶屋を訪れていた。
前々から訪れたいと思っていた鍛冶屋で、これからの道中、少しでも戦闘を楽にするためである。

「ほほー、あの鋼鉄のクオリティストね。
 んでフィル君、何ゆえに会いたいの?」
鍛冶屋の店主、オーガスタ・エイベル、鍛冶界では一、二を争う
技術の持ち主。
「最強の剣を作りたいんです、村を、仲間を守るために。」
「ふーん、村に、仲間、ね・・・
 本当に守りたいの?」
疑問を突きつけてくるオーガスタ。
「はい。僕が守らなきゃ、あいつからはみんな逃れられない、みんな死んじゃうんです。」
「あいつ?あいつって誰だい?」
「[大切な人を奪った]とされる、快晴の調べと呼ばれるアーツからです。」
調べ、その言葉を聞いて驚いている。
「うぬぼれんじゃないよ、あんたの言う最強の剣じゃ守るどころか格好のエサだよ、乗っとられちまう。」

「そんな!」
「そんなも何も、あのアーツは追わないほうがいい。
 関わったものに関わってる人をイモヅル式で吸われる。」

「私は知らないよ、壊し方とか、倒し方とか。
 でも、守りたいなら出来る限り、心を強く持つ事だね。」

「はい・・・」

鍛冶屋をあとにするフィル。

「ふーん、あんなガキが調べを追ってるのか。笑わせるな」
胸元に光る[誘惑の調べ]と呼ばれるアーツが鈍く輝く。
「快晴・・・確か、トゥアメルだったかな?持ち主は。」

「アイツもエサにされちまうね、きっと。」
背景設定[4]

チャボ・レケミスト
鋼鉄のクオリティスト。
鋼鉄をメインクオリティとして、風・炎をサブクオリティに持つ。
本編では遅れてクオリティを発し、高い資質を先生に見せ付けた。
また、三つのクオリティを持つクオリティストは彼が初めてで、
聖ユガリアでは期待のクオリティスト。
630年現在13歳、聖ユガリア共通模擬テスト全国124028人中53471位。
クオリティスト認定試験は堂々の一位で、聖ユガリア附属の学園では噂になっている。

フィル・セッテンブルグ
死のクオリティスト。
訓練で水のクオリティを使えるようになったものの、平均以下。
死のクオリティは隠し続けてきたが、幼い頃に友人に乗せられぽろっと言ってしまったことからすぐにばれた。
しかしクオリティを発してはいないため、議論が行われたこともあった。
共通模擬テスト852位、チャボと比べるとかなりの頭脳である。
クオリティスト認定試験は不参加。

シモン・トゥアメル
音のクオリティスト。
聖プレテル学園ではもっとも期待される女性クオリティストで、
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経バツグンと欠点がないことが欠点と言えるような出来杉くんの女子版(笑)

フィルにはクオリティを知りたい一心で付きまとうが、今では・・・?
ちなみに630年現在13歳で、聖ユガリア共通模擬テスト全国5位、クオリティスト認定試験の成績は3位。

調べのアーツ[2]
古代人のクオリティが宿るとされているアーツ、調べ。
共通としてクオリティを込めようとするとその者のクオリティを増幅させる。
結果、込め続けていくとオーバーロードし、アーツに意思をのっとられてしまう。

夢と現実

2006年7月30日 連載
チャボ編 クテレイル地方・630年

追うもの、追われるもの。チャボと雨音の調べは死ぬまで続く鬼ごっこを始める・・・


チャボ編 第三話 「謎の転校生」

バクスの失踪、それは突如として学園の生徒に知れ渡る事となった。
ただ、バクスの取り巻きたちの意見がバラバラで、学園の上層部、
生徒会や教育部、青少年健全委員会などの委員会が迷走するばかりであった。

真実を知るチャボでさえ、意見しようにも出来ないほど、噂はただただ迷走していた。

「バクスさん、なんでいきなりいなくなっちゃったんですかね」
「チャボ、何か知らないのか?」
取り巻きの一人、アイルがチャボに意見を求める。
「さぁ・・・あのあと打ち負かしたんだけど、僕もよくわからない」
「そうか・・・」

そんな中、クラスの女子の間でささやかれている、噂をチャボは耳にする。

「すっごいカッコイイ男子が転校してくるらしいよ!」
「ホント?狙っちゃおうかなー☆」
すっごい大きな声で話す女子たち。
「なぁ、その男子ってだれだ?」
嫌でも聞こえてくる会話の中に、チャボが割って入る。
「(元出来損ないだ)さぁ?自分で調べたらぁ?」
「(きもいねーw)そうよ。あ、ごめんね、調べられないよね。出来損ないだもん。」

いまだクオリティが使えなかったことを引きずる女子たち。

「うるさいな。試験の時見なかったのか?」
この一言でほとんどの女子は黙る。
しかし、一人、つぶやいた女子がいた。
「イカサマ使ったくせに。」
チャボが怒りだす。
「なんだと、イカサマなんて使うわけ無いだろ!」

ちょうど良くチャイムが鳴り、先生が入ってくる。

「今日は君らに新しい生徒を紹介する。入れ」
入ってくると同時に、女子が悲鳴にも似た歓喜の声を上げる。
「始めまして。フィル・セッテンブルグです。
 少しの間ですが、よろしくお願いします。」
(フィルだってー☆ものすごい美形・・・)
(狙っちゃおうっと)
(あ、ずるいぞ!)
「そこの女子、少し黙れ」
クオリティで口を止める。
「もごもごもごもごもごっもご!!」(ふざけないでよ!この体罰教師!!)

「ほぉ、もっとやってほしいのか?」
「・・・・・・・」

「さて、フィル君は隣の地方から一人でやってきたらしい。
 どうやらうちのクラスの人に用があるようだが・・・」
「はい、チャボって人なんですけど・・・」
”チャボ”その一言でクラスのイメージが変わる。

「僕ですが。なんですか?」
名乗りを上げたのは、見るからにクオリティを発していない少年だった。
「君が?まったくクオリティを感じないぞ。」

「んー、めんどくさいから消してるんだ。疲れるし」
先生が割って入った。
「はいはいそこまで。次の時間は実戦の模擬練習だから、戦うなりなんなり好きにしてくれ」

闘技場

「んじゃあフィル君の力を見せてもらおうか。チャボ、フィル君のご指名だ」
「え、僕?」
フィルが先生に少し断る。
「すいません、このアーツを皆さんに持たせてもらえますか?」
「ん?ああ、良いぞ」
全員に配られるアーツ。
「これのクオリティを必ず引き出しておいてください。」

「・・・?まぁ、良いか。」

ゴング(?)が鳴る。

「君がチャボか、鋼鉄の。」
「ああ、そうだよ、フィル。」
「悪いがそのアーツ、壊させてもらう」

「なんだって!?」

烈鳳槍を壊す そう言い告げられたチャボ。
次回へ続く!

充実させましょ

2006年7月30日
背景設定[2]

試験の仕組み
試験の時先生を倒すことで学園に三つしかない特別なアーツを授かる。
さらに、このアーツを手に入れたものにのみ課せられる使命があり、
その内容は「古代人が作ったアーツを見つけてくる」というもの。
これにより学園内にあるアーツは度々入れ替わり、三つより多ければ学園の予備として保管される。
ちなみに聖ユガリア学園では先生を倒したのはチャボが初めてであり、クオリティが使えなかった者という事でもチャボは異様なクオリティストデビューを果たしたのである。

烈鳳槍
風と炎のアーツ。
みなぎるような炎のクオリティに身を包まれ、
微々たる風を放出している、古代人のアーツ。
このアーツは焔の槍として発見されたが、風のクオリティも持ち合わせていることから烈鳳槍と呼ばれるようになった。

雷鳴剣
雷と音のアーツ。
その刀身には電気を帯び、うっすら青白く輝く。
振りかざしクオリティを引き出すことで対峙するものに精神を揺さぶる音を聞かせる。

暴流弓
水と土のアーツ。
流れる水の力が弓に込められており、この弓で矢を打ち出すと
濁流を纏いながら矢が放たれる。
さらに土を自在に操ることが出来るアーツ。

クオリティの仕組み
万物に込められているクオリティは
炎・水・風・雷・音・土・鋼鉄・星(鋼鉄はチャボのクオリティ)
とある。
それぞれに精霊が当てられ、
炎・ヴォルキュリア
水・アキュリア
風・ウインディア
雷・サンディア
音・サウンディア
土・グランディア
鋼鉄・?
星・ユガリア(神)

となっている。

背景設定[2]

2006年7月29日
調べのアーツ
古代人が作り出したといわれるアーツのうち、
きわめて強い力をもつアーツ。
その調べのアーツは必ず何かを奪ったとされ、
文献には大切な人を奪ったとされる。
それぞれ8種あり、
雨音の調べ
快晴の調べ
誘惑の調べ
夢への調べ
未来の調べ
過去の調べ
執着の調べ
開放の調べ
とそれぞれ名前が付いている。

ぶーらぼー

2006年7月29日 連載
フィル編第二話

ヴァレシアからすぐお隣、クテレイル地方。
有名なクオリティ養成学校、「聖ユガリア学園」の本拠地とされている。
まるでチェーン店のようにユガリア学校長は次々と学園を建てている。
学園名はクテレイルに伝わる絶大なるクオリティを持つといわれる「ユガリア神」を主としており、六代主精霊、十二代副精霊、二十四代霊僕・・・とずーっと続いているらしい。

ちなみにフィルの通う学校は「聖プレテル学園」。星のクオリティを使う精霊「プレテル」を崇める学園だ。

フィルはチャボをたずねるべく、父さんに許しを請うことになった。

第二話 「旅立ち」

「父さん、あのチャボって奴に会いたいんだけれど。」
「鋼鉄のクオリティストか。」
父は妙に悟ったような、死ぬ間際の様な顔をして、こう答えた。
「いいぞ、フィル。世界最強の剣を作って来い。」
あらかじめ用意しておいたような、そんなリュックを出す。
「これに準備は整えてある。」
かなり重そうだが、背負ってみるとそうでもない。

学校のみんなに伝えると、クラスに動揺が走る。
「え、フィル行っちゃうのか。」
「大丈夫、少しクレテリアに行くだけ。」
クラスの話題はそれで持ちきられる。
「ところで最後までフィルはクオリティを見せてくれなかったよね。」
「シモン、それを聞かないでよ。見せちゃいけないって父さんに言われてるんだ」
「ふぅん・・・」
シモンは特に強いクオリティの持ち主で、クオリティ関連の成績は常にトップ。
勉強も怠らないため、非常にフィルのクオリティに興味を示していた。

盛大に(といってもクラスのみんなだけだが)フィルの家でお別れ会が始まった。

暑い中、一人一人旅立ちを祝ってくれた。
「フィル、最後に一回、手合わせできないか。」
「良いよ、みんな、少し頭痛がすると思う、クオリティを集中させておいて。」

フィルのクオリティが見られる。それだけで皆興奮していた。

「行くよ、本当にキツいと思う、後悔しないで。」
「お前らしくないな。早く来いよ。来ないならこっちから行くぜ!」

火を剣から纏わせる。
「くらえ、[炎の剣]!」
纏わせた瞬間、アーツ・・・「ファイアブレード」が崩れ去る。
「なんだ、何をしたんだ?フィル!」

「これが僕のクオリティ。「「死」」のクオリティだよ。」

ざわめく友たち。
一人が異変に気づく。
「何これ、頭が痛い・・・」
クオリティを集中しないで見ていた者だ。

「言わんこっちゃない。行くよ、イビシア」
剣にクオリティを込め、イビシアに攻撃を加える。
「あれ、痛くない・・・」

言い終わると同時に倒れるイビシア。
クオリティを解くフィル。

「死のクオリティなんて聞いた事ない。凄いな」
「チャボだっけ?そいつと手合わせしてみなよ。」

「うん、それはいいな。是非手合わせしてみるよ」

夕日を後ろに輝いてみえるフィルを、クラスメイト全員が送り出した。
フィル編(チャボ編が本シナリオです。チャボと出会うまでフィル編は続きます。)

鍛冶が盛んな地方、ヴァレシア。
鉄にクオリティを込める事で、頑丈かつ強力なアーツを作る事が出来る。

「父さん、俺にも鍛冶を教えてくれ。」
「もう鍛冶に興味があるのか、フィル。」
小さい工房。
ヴァレシアの鍛冶屋の内、まだ規模は小さいが技術は一流(だと思い込んでいる)セッテンブルグ家の鍛冶屋。

その子孫、フィル・セッテンブルグは13歳の夏、鍛冶に興味を持ち始める。

フィル編第一話 自分だけの剣

「星のクオリティ?」
「そう、星さ。クオリティの中できわめて強い力を持つ。」
「古代の人々はみんな星のクオリティを持っていたんだ。」
「それって、美味いの?」
「フィル、お前もクオリティが使えるようになったんだから憧れとかはないのか?」
「だって俺のクオリティは・・・」
「すまん、そうだったな、すまん・・・」

フィルは幼き頃の会話を思い出す。

彼のクオリティは死。
万物に死を与えられるクオリティ。

とは見かけだけで、まだフィルは使いこなす事は出来ない。
それに、死のクオリティは自分のクオリティをすべて使い果たさなければいけない上、自分よりクオリティが小さいものにのみ効果がある。

「父さん、叩けばいいんだね?」
「ああ、お前のクオリティをハンマーに込めつつ、叩くんだ。」

カン、カンと乾いた音が響く。



「ほう、フィル、見てごらん。」
「なにこれ?・・・聖ユガリア学園?・・・遅れてクオリティを発した少年・チャボ?」
「お前と同年代だな。この前感じた凄いクオリティ、あれはこの少年のクオリティだったようだな。」
「あのなんだか鉄が集まるような、そんなクオリティ?」
「鋼鉄のクオリティだそうだ。初耳だな。」

「俺にも、それだけ凄そうなクオリティがあればな。」

死のクオリティを持つものは死神と呼ばれる。
発していると周りのものに害を及ぼす。

父はそんな死のクオリティを封じるように、「断末魔の調べ」という古代のアーツを僕にくれた。

自分だけの剣を作る、そう考えていたフィルはこの鋼鉄のクオリティを持つ少年を訪ねてみようと思った。

コメントお返事

2006年7月29日 連載
>>りすさん
応援ありがとうございますね。
でもこういうのって結構見られるの恥ずいです。

第二話 異様

チャボが試験で凄まじいクオリティを放出したのは
学園新聞にまで載るほどになった。
「凄まじきクオリティスト現る!」
と見出しが付けられ、あの紅蓮の竜巻が貼られていた。
いつの間に写真なんて撮ったんだろうか。

ただ、この試験を境に先生・クラスメイト両方からの目が変わった。
「アイツは凄い」そう思われるようになったのだ。

「おい、チャボ。」
試験の時先生のソウルクオリティで気絶するまでやられたバクスだ。
「地下の闘技場に来いよ、必ずだ。」
いきなり決闘の申し出らしい。

「いいよ。でも何をするんだ?」

「来てのお楽しみだ。来るとは限らないしな」

嫌な予感がするが、アレだけのクオリティを見せ付けてやったんだ、負ける気はしない。

放課後

足音だけが響く闘技場。

「よく来たな、チャボ。」
「そうか、そういうことか、バクス。」

ズラッと並んでいるのはバクスの取り巻きだ。

「たかが先生を倒しただけでいい気になるなよ」
「そうだそうだ!出来損ないの癖に!」

全員アーツを構える。

試験では先生に負けることがほとんどであり、
勝つことが出来る生徒なんてそうそういない。

だから、勝った人には学園に3つしかないアーツ、
「烈鳳槍」、「雷鳴剣」、「暴流弓」がもらえる。

「お前を倒して、その槍を奪ってやる。」

バクスの取り巻きはほとんどが試験を合格している。
ざっとみて14人ぐらいであろうか。

「来いよ、バクス。僕を馬鹿にしてたろ。今度はお前が馬鹿にされる番だ。」

槍を構える。

クオリティを込め始めると同時に、14人が一斉に矢を放つ。
クオリティを槍に込めながら、チャボは風を発生させて矢を打ち落とす。

「クソ、アイツは敵のアーツからクオリティを引き出せるんだったか」
「えぇ!ちょっとバクスさん、そんなん倒せないじゃないっすか」
「もともとあんな奴倒すの無理ですよ〜
 なんかもう凄いクオリティを発してるし。立ってるのだってやっとですよ。」

「くそ、アイル、行け!お前のアーツは水だからアイツの炎のアーツには相性がいいはず・・・」

「え、俺!?」

水を噴出させながら向かってくる、アイル。

「お前らいい加減にしろよな。僕に勝てるわけないだろ。」

鉄のクオリティを放出し、敵のアーツをボロボロにさせる。
さらに、風を槍に纏わせ、槍を構える。

「くらえ!」

槍でなぎ払うと同時に、風の刃が広範囲にわたって広がる。

「ひぇぇ、バクスさん、何とかしてくださいよ〜」
「お前、そんなこといったってアーツがボロボロなんだぞ。」

「うげ!」「うぎゅ!」「ふぇっ!」

取り巻きはほとんど気絶。

「くそ、コイツでお前なんて木っ端微塵にしてやる!」
取り出したのは怪しい光りを放つペンダントだ。

「俺が偶然学校のすぐそばの洞窟で見つけた、
 古代人のアーツ「雨音の調べ」だ!」

クオリティを込めると同時に、バクスのクオリティが急激に増幅されていく。

「馬鹿、そんなことしたらお前がクオリティをまとめきれなくて自滅するぞ!」

「死ねぇ!!」

七色の波動を放出する。
綺麗だが、何かどす黒いクオリティを感じる。

「くそっ!」
槍を構え、鉄のクオリティを集中させる。

波動が槍に直撃する。

バクスはすでに気絶している。

「・・・なんで気絶しているのにクオリティを出し続けているんだ?」

「ふ、気づいたか、レケミスト」
バクスが白い目でコチラを見る。
「お前、誰だ!バクスじゃないな!」
「このアーツにずっと意識を込めておいたのだ。
 長い間、誰かがアーツを使わないかと願っていた。」
「バクスをのっとる気か!」

波動が止む。
「ふっ、お前が私を追う追跡者になる。
 私は逃走者になる。どちらかが死ぬまで続く、鬼ごっこの始まりだ!」

チャボは、これからこの秘宝「雨音の調べ」と接触した事によって、
運命の歯車が狂わされてしまうのか・・・
第一話 「アーツ授与」

待ち遠しかった2学期が始まる。
僕・・・チャボ・レケミストが、認められる日になるんだ。

「うわ、来たよ。チャボの奴、クオリティ使えないくせに。」
「レケミスト家ってみんな使えないのかな(笑)きもー」

ふつふつと湧き上がる怒りをおさえつつ、試験に臨む。

試験は先生との1対1。
先生が普通にアーツを使って戦うと生徒では致死量のダメージを負う。
そのため、先生は今自分が装備している腕輪や服に自分のクオリティを込める。
即席のアーツで戦うわけだ。

「アイル・クレテウス、前へ。」
「はい。」
試験が始まる。
みんながみてる前でクオリティを使うのはなかなかに勇気がいる。

一応、プレッシャーによってクオリティが発揮できなかった生徒はあとで先生とマンツーマンでやる事になっている。

「くらえ、水の刃!」
アイル、と呼ばれた少年が剣から水を噴出させながら先生を切りつける。
「甘いぞ、アイル。」
風でいなし炎で反撃する。

非常に小さいのだが、単に圧縮しているだけなので当たればダメージは大きい。
しかし、当たる、と思われる箇所にクオリティを集中すればどうということはない。
クオリティは防御にも使えるのだ。

「次。バクス・ケルズィア。」
「あいよ。」

自分の一人前だ。

「せんせぇ、本気でやっていいすかぁ?」
「なめてかかられるのは不毛だな。来い、バクス。」

ちなみにこの先生、フォル・ギルテリアは、風と水が得意な先生だ。

「いくぜぇ!雷の閃光!!」
弓のなかで比較的強力な属性攻撃。

それは確かに今までの生徒とは一味ちがう威力を持っていた。

「ふむ、自身に見合うだけの威力はあるな。」
なんと、アーツに向けて撃たれた矢なのだ。

パリィ、と音をたて崩れ去る腕輪。

「それで終わりか?」
龍を模した水が現れる。

「きっとお前だけであろうな、これを生徒が見たのは。
ソウルクオリティ。召喚獣とでも言うのかね。」
バクスに襲い掛かる、水の龍。
とても力強くタックルする。
しかし、致死量にはならないようにしていた。

・・・気絶はしたが。

「次。(なんでコイツが?)チャボ・レケミスト」

(うわ、アイツなんでいるの?)
(いらねぇよ、死んじまえ!!)

クオリティ自体が放つオーラ。
それが痛いぐらいにチャボの強大なクオリティを通して伝わる。

「・・・はい」

(出来損ない!!出てくんな!!)

チャボが言い放つ。
「右から三番目の奴、黙れ。」
すこし動揺を見せる右から三番目の少年。
「はぁ?何も言ってな・・・」
「出来損ない・出てくんなって思ったろ。」

あぜんとする少年。
しかし、瞬く間に笑いが広がる。

「ぎゃはは、何あてずっぽうなこといってんだよ!
てか、出来損ないって事気付いてたんだ。きも」

無視して先生のほうを向く。
「先生、本気でかかってきて下さいよ。こっちも本気でやりますから。死にますよ」
「君に言われるとは思わなかったな。チャボ。いや、出来損ない。」
言い終わると同時に両掌から炎が吹き出る。

それはこぶしにまとわりつき、風へと姿を変えた。

風に乗せて炎をうちだす、「風火球」と呼ばれる技。

「アーツなしじゃそれぐらいしか出来ませんよね。」
チャボが自分のクオリティを少し、解放する。

ブゥン・・・といった感じで場にいる全員に伝わるクオリティ。

かき消される火球。

「驚いた。まさか君は資質があったのか?」

「つい先週ですよ、使えるようになったのは。
 親父の話に少し出てきた遅れてクオリティを発するクオリティスト。僕がそうなんだとは思いませんでした。」

炎に包まれた斧を取り出す先生。

「君には本気で向かわねば。」
「遅いですよ」
あふれるようなクオリティを放出するチャボ。

剣・・・ラピッドナイフにすべてのクオリティを集める。

「はっ、そんなことしたら剣が砕けるぞ。」

「それもクオリティで補えるんですよ。
 僕のクオリティは鋼鉄。鋼鉄のクオリティなんです。」

「馬鹿な!そんなクオリティ、聞いた事もない!」

剣が硬質化していく。

さらに、炎を纏いはじめる。

「どこからその炎のクオリティを引き出した!?」

「あなたのその炎の斧からですよ。」

風と炎を纏いし鋼鉄の剣が、地面に振り下ろされる。
紅蓮の竜巻が巻き起こり、先生に直撃する。

「くそ、お前なんかに見下されてたまるか!」
持っていた水のクオリティを最大に引き出し、水の龍を作り出す。

竜巻と当たる龍。
すごい音とクオリティの波動。

最終的には相殺していた。

「くそ、規律だ、お前には・・・この炎と風のアーツ、烈鳳槍をやろう。」

「ありがとうございます、先生。」

後に烈鳳のチャボと呼ばれる彼の壮絶なクオリティストデビューだった。
10歳の時に言い放たれた言葉。

「お前にクオリティはない。」

やさしかった友達も、少しずつ僕を避けるようになり、
最終的にいじめられ始めた。

親も、「悔しいならクオリティを見せてみなさい」とか、
出来もしないことを平気で言う。

一番自分が嫌だった。
こっそりアーツを買ってきて振りかざしても、何も反応しない。

すごい奴なんて炎を出したり電気を帯びさせたりできるのに。


そんな僕が今、クオリティを引き出している。
いじめられていた日々、避けてきた奴ら。

見返せる。そんな言葉が僕に生まれていた。

15才の夏。
2年の練習なんていらないぐらい、強いクオリティ。
二学期突入から、アーツを渡される。

今このとき、使えるようになるまでは嫌だった新学期が、
とても待ち遠しかった。

小さい頃に買った、「ラピッドナイフ」。
ただのナイフだったこのナイフも、今僕の手で
竜巻をも起こせる風のナイフに変わった。

・・・僕の力を、見せてやる!

(一時間)

2006年7月28日
なんだかねー、建てて見たかった。

自分が友達と適当に話し合った末に出てきた物語。

・・・タイトル未定。

とりあえず、初期設定だけでも。

人物紹介

チャボ:二人の主人公のうちの一人。
使う武器は槍で、ネコのタマを飼っている。

フィル:もう一人の主人公。
使う武器は剣。鍛冶屋の息子。

背景設定

物に込めてある力「クオリティ」を引き出し戦う「クオリティスト」と呼ばれる人々。
駆け出しクオリティストチャボは、タマと一緒に大切な人を奪ったとされる秘宝「雨音の調べ」を探す。

クオリティ
物に込められた力や、自分に備わっている力の総称。
クオリティを引き出すための媒介、「アーツ」を用いることで
クオリティストたちは自分の力を引き出す。

なぜか古代の人々が意思を込めて作り出したアーツはクオリティの力が強く、
クオリティスト憧れの装備である。

アーツ
アーツ職人と呼ばれる人々がタダの剣やお守り、棒キレに
自らのクオリティを変化・結合させてアーツ自身に宿るクオリティの力を増幅させ、
能力の高い武器を作り上げる。
この武器の総称がアーツである。

クオリティスト
人々は皆クオリティストになる可能性を秘めている。
7〜10歳ぐらいにクオリティを引き出せるようになるといわれている。
その後クオリティストになるために2年ほど訓練を積んだものが今で言う高校生になったとき、クオリティストとしてアーツを渡される。

しかし、クオリティを操る力が使えないものも居て、いじめなどの対象になってしまう。

まれに、遅く力が発動することがあり、そのクオリティは尋常じゃない力を発揮すると言われる。

とりあえず、「10分で読みきれる」を目標にします。

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